撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

いちどバラバラにしてから・・(どんど晴れ)

 とっちらかった部屋を片づけるときは、いちどぜ〜んぶひっくり
返してみる。要らないものを取りのけて、何をどうしたいのかよく
考えてみる。
 こっぴどく汚れてしまったものを洗うときは、荒い汚れから
順々に落としていく。ふるい落として、ブラシをかけて、下洗い
してからていねいに・・。


 その中で、見えなくなっていたものが見えてくる。今まできづか
なかったことに気づかされる。きれいになったころには、自分の
気持もきっときれいに落ち着いている。


 夏美が前向きでいい子ちゃんだけの性格でもないことも見えて
くる。意地っ張りで頑固で、これと決めたら自分を押し通すある種
の我が儘さも持っている。


 伸一が自分の考え通りに事を運ぼうとする横暴なだけの男でない
ことも分かる。自分を大事にしてくれる人、大切なものを守ろうと
する、優しく一途な面も見える。


 気のいいおじいちゃんかと思えば、気むずかしい職人気質の平治
さん。夏美の味方をする聡にお前はいったいどちらの味方なんだ!
とまくしたてているうちにうっかり「そんなにその女に惚れてるのか」
などと口走ったことがまともにストライクゾーンを突いてたりして
慌てて言い直すあたりのデリカシーもなかなか・・。そうか、夏美を
気に入っていた・・というよりは、大好きな大女将を生き生きさせて
くれる存在だったからこそ、夏美に目を掛けていたという部分も
あるに違いない。


 夏美が柾樹のことすら一旦白紙に戻し女将修行に賭けているかと
思えば、職人気質の男達が意外と女のために生きているという
思いがけない発見をしたり・・。智也くんが夏美に感化されてもう
一度頑張ってみようかと思い直してみたりして・・。


 きれいになったら見違えてしまうように、一度バラバラにして
組み立てなおした自分は自分でも驚くほど変わっているかもしれない。
 そして、もつれ合ったものごとの糸も綺麗にほぐしてこころを
込めて並べ直せば、見事な織物が出来上がることもあるかも知れない。


 それにしても、このごろ、伸一の妻えみこさんが一番女らしく
包容力のある、大人らしい人間に見えてしまいます(笑)。