撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

まいったまいった(どんど晴れ)

 仲居頭だった時江さんがこっそり加賀美屋の様子を見に来て
いた。板場では、仲居やら板前さんやらが言いたいこと言ってる。
番頭さん、出るたびに誰の味方かわかんないような言いたいこと
言ってない?なんだか裏方がこんなもんじゃ加賀美屋も締める人が
いないと危ないよなあ・・と思ってしまう。特に、板長さんは
最初夏美を怒鳴ったときにはおおっ!と思ったけれど、なんだか
そのあとはいいとこ見せてくれないよなあ・・。もうちょっと
魅力的な人がいて欲しいものですがどうも・・弟くんくらいか?
見所あるのは。時江さん帰って来て!(笑)


 今日の出色はえみこさん。今まで出さなかったような、落ち着いた
大きな声で、自分の言いたいことをはっきり言う。きちんと頭を下げて
断りを入れる。伸一の発言も笑顔すら浮かべて落ち着いて聞く。そして
「私は出ていきません」と・・。家庭を守り、子供を守る、母の強さを
見たような気がした。


 「旅館の娘だから、女将になれると思って結婚したのに!」という
あんまりと言えばあんまりな伸一の言葉にも動じない。それは、きっと
えみこが、この自分の家族を守る決心をしたからだろう。そして、伸一
が、女将にこだわるのも、それは、淋しかった子供の自分を否定したら
やっていけないことをどこかでわかってやっているからだと思う。


 淋しい人はどこかに引っ掛かりををもっている。触れて欲しくない
ところだったり、妙にこだわるところだったり・・。えみこはきっと
伸一のそんなところに気づいたのだろう。自分が子供を育てていく中で、
そして、伸一を愛していく中で・・。えみこが頑ななまでに女将にならない
と宣言し、子供達を最優先して家庭を守っていること、自分は母として
妻として、嫁として、加賀美屋を支えたいと言っていること・・。それが
伸一の淋しい心をいつも抱きしめてやれるように、その伸一の愛情から
生まれていることに伸一が気づくのはいつだろう。満たされなかった
心の渇きも、いつか溢れる愛を受けてたっぷりと潤う日が来るといい。
 そうしたら、こだわりを捨てて、一番いい道を選べるのではないかと
思う。自分のために、家族のために、加賀美屋のために・・・。


 それにしても、女将としてはすっごく人間の出来た環が、私事、特に
息子のことともなると、まったく、ただの愚かな母親になるのが面白いと
言えば、面白い。まいったまいった・・という環は、究極の女性、女将と
いうより、オヤジの入ったそこらへんの働く母親みたいですね。


 柾樹くん、このごろなかなかいい男なのですが、如何せん、夏美ちゃんが
まったくの不調です。すっごくしびれる愛の言葉も、お互いが同じ気持ちに
なっている、とっても素敵な時間にしかその効果は発揮出来ないのね・・
と、思ったりして(笑)。