撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

まあまあ・・(どんど晴れ)

 夏美、部屋付きの仲居になる。でもって、張り切ってお仕事
してます。早速お客さまの男の子と・・。


 予想もしなかった馬の背に乗って、平静を装いながらもその
ココロは隠せない。楽しい?と聞かれてまあまあ・・なんて
いってるけど、唇の端はしっかりうれしい!って動いてるよ。


 通りすがりの長男、その場面を観て「な〜にがまあまあ・・だ」
そうそう、人のことはよくわかるよね。


 大人は言葉で心を伝えようとする。心の動きにぴったりの言葉を
持っている人はそれを出来る。でも、子供は毎日あらわれる新しい
心の動きをあらわす言葉を見つけるのに追いつかないことが多い。
大人ですら時にそう感じ、もどかしさやいらだちや切なさを感じる
のだから・・・。


 「星の王子さま」で王子さまがつぶやく。言葉じゃなくてふるまいで
判断すればよかったのに・・・と。時に、そう思う。言葉を受けて
言葉で返すのではなく、ふるまいを見て、心に寄り添えばいいのだと。
 自分の時計で時間を計るのではなく、相手の時間の流れるのを
ともに過ごしてみればいいのか・・と。


 大人の初めての歌は、どこかで聴いたことのある変奏曲であることが
多いが、子供の初めての曲は、声を出すことすら初めての、まったくの
まっさらの曲であるのだろう。素直に怖れず声を出すこと・・大人が
教えることはそこまでなのかもしれない。そしてあとは、子供の歌う
歌声をこころのままに聴かせてもらえばいいのだと・・そう思う。