撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

大人のほうが恋は切ない

「成り行きなんかで人を好きになるわけないじゃん」

「若い頃って、大切にするものがわかってなかった」

「結婚してるからって人を好きになることがなくなる?」

「顔を見るとけっこう切ないよ」


 素直なココロは素直なココロを引き出すのかな?カシスオレンジを
前にして、いつも聞かない大人の恋愛論など・・。びっくりして
だってあの頃あなた結婚してたじゃない!なんて言った言葉がなんとも
野暮に聞こえる、おとなのおとぎ話のような会話。現実とおとぎ話の
区別がつくからこそ出来るひとときのおとぎ話・・・。


 大人のほうが恋は切ない・・そんな歌を思い出しながら、ふと思う。
若い頃の切なさが甘酸っぱさだとすれば、大人の切なさはほろ苦さだ。
カシスオレンジなんかの甘っちょろさじゃない。


 たとえば春のふきのとう。たとえば秋の秋刀魚のわた。ほんの旬を
見極め、新鮮な素材を選び、そして愛で感謝して味わうときのみ美味しいと
感じられる、繊細な食べ物のように・・・。日常のなかのほんのちょっと
したエアポケットにきらり光る小石のように・・。味わうもよし、箸を
つけずにおくのもよし。拾うもよし、拾わぬもよし。ただ、世の中には
そんなものもあるのだと、知っておくだけで少しココロに奥行きは出る。


大人のほうが恋は切ない・・?・・それは、実った恋の素晴らしさを
知っているからこそ・・なのだろうか・・・。