撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

恋をしたら・・

ほんとうに恋した者は
失恋するものじゃない
それはずいぶんさびしい
たえられないほどさびしい・・・


 以前読んだ本の中にでてきた一節をふと思い出す。記憶は記憶を呼び
起こす。きっとなつかしい歌を聴いたからだ。歌は、曲は、それを聴いた
当時の空気を思い出させる。もう、忘れてしまった恋ですら、その心の
感触だけを思い出させる。懐かしい、苦い、喉の奥が締め付けられるような
鼻の奥がツンとするような・・・。おぼろげな幸せなような気もするが、
孵らなかった卵のような残酷な気もする。そう、実らなかった花・・と
いうよりは朽ちた果実のような生々しさがつきまとう・・。もっと昔の
恋は、香りだけが漂う形すら忘れてしまった小さな花。


 それでも、あの頃は何も分かっちゃいなかった・・と今は思う。だから
あんなに何度も恋が出来たんだ。もし、これから先、恋することがあったら
昔の何倍の心の振幅で胸を震わすことだろう?あの頃の何倍の強さで
恋する人の言葉やしぐさに翻弄されることだろう?


 それとも、恋をしたときは何も見えなくなって、なにも考えられなくなって
ただの我が儘で独りよがりの小娘のようになってしまうのだろうか?


 オフコースの懐かしい曲を聴きながら、涙を流しているわたしと、涙を
流している私を見ているわたしがいる・・・。