撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

やさしい思い出

 「芋たこなんきん」で、おかあさんがホットケーキを焼いている
のを見て、昔を思いだした。フライパンで一枚ずつ焼いてたなあ・・
デパートの食堂で食べるみたいなきれいな焼き色のふっくら分厚い
ホットケーキにしたくって、母と色々試してみてたっけ・・。


 やさしい思い出は、なぜか美味しいものや暖かいものの記憶に繋がる。
ふかふかのホットケーキ。失敗して山ほど出来たドーナツ。ストーブの
上で煮えるぜんざい。何度も手ほどきを受けたホワイトソース。


 小学校2年生の時の私の誕生日は今でも覚えている。2学期に転校
してきたばかりで、当時はやりの誕生会も誰を呼んでいいか迷ってたら
クラスの女の子全員に声を掛けていいと言ってくれた母。ほんとに、
17〜18人がうちに大集合してくれたのを覚えている。何曜日だった
のか、何時集合だったのか、今となっては何も覚えていないけれど、
テーブルの上に何が並んでいたのかすらも忘れてしまったけれど、母が
みんなに振る舞ってくれた、ココアの湯気を何故か覚えている。


 2月の寒い日に集まってくれた友達。あんなに大勢の友達に何も言わずに
色々とひとりで世話を焼いてくれた母。わたしはなんて大きなプレゼントを
もらっていたことなんだろう・・。わたしの嬉しそうな顔を見るだけで
母は幸せを感じてくれていたんだろうか?いくつになっても母にかなわない
と思う。子供を育てるこの年になって、思い出せば出すほど、気づけば
気づくほど、そう思う。