撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

話したいことあんのやろ?(芋たこなんきん)

 「あんた、小説家なのにウソつくのへたやな。なんか話したいこと
あんのやろ?」。町子の雰囲気を感じ取って、健次郎が言う。町子
お得意の「な〜んもありません・・」それがいちばんのウソなんだけど。


 とってもデリケートな問題の時は、話すかどうか迷う。話しても
自分の言いたいことが伝わるかどうか、かえって伝えることによって
自分が望むことと全然反対の方へすすんでしまったりすることすら
あることを、ある程度の経験と記憶力と感受性を持っているひとなら
知っている。そして、何より話の内容に出てくるひとのことを思いやれば
人に話していいものかどうかそれはそれは気を使う。のぼるくんのことを
思えばこそ、簡単にしゃべるわけにはいかない・・。


 まあ、はなしたくないんやったら・・と席を立ってしまった健次郎。
話したくない訳じゃないんです・・町子さん。大事なことを話すときには
それだけの時間が要る。誤解のないようにわかってもらうためには、
わかってくれるまでつきあってくれるかどうか、相手の状態を見極める
必要がある。それは、もったいぶっているわけでも、ふてくされている
わけでもなく、いちばんいい状態で話せるかどうか、話す方も、迷って
いるわけです。相手も選ぶけれど、同じ相手でも相手のコンディションに
よってかなりコミュニケーション能力は変わるからね。


 町子さんですら、封筒がなくなったときは近藤さんにまくしたててしまう。
それでも落ち着けば、目の前のことが見えてくる。前向きに生きるためには
怒るだけでは同じところをぐるぐるするだけ、怒るのは一瞬でたくさん。
 そのあと、どんなふうにこの事態が納まっていくのか、のぼるくんに・・
近藤さんに・・町子さんがどう向き合っていくのかゆっくり見ていこうと
思っている。健次郎さんともね!