撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

説明できない気持ち(芋たこなんきん)

 町子と朝子。ちょっとした出来事。でも許せなかった出来事。
今振り返ると、どうしてあんなことしたんやろか?・・・と
ほろ苦く感じる。多分、あの頃言葉で説明出来なかったんだろう
・・今だったら出来るけど・・と町子。子供は時々残酷なことを
する・・と健次郎・・。


 残酷かも知れない。説明出来なかったのかも知れない。でも、
町子は町子の大切な世界を守りたかったんだ。他の人から見たら
取るに足らない、理解できない、夢の国のお城のような世界かも
しれないけれど、理屈抜きに、彼女は守りたかったんだ。


 大人になっても時々ある。説明はできても、わかってもらえるか
どうかは分からない、自分だけの大切なもの。細心の注意を払って
入る、自分だけのお城。そんなものもう手放した人もいるだろうし
継ぎ接ぎしながらなんとか持ってたりするかも知れない。それとも
誰にも見せずに綺麗にとってあるかも・・・。


 幼い子供の心を残す頃のそれは、残酷なほどに潔く砕け散る。
その欠片はときおりちくちくと傷むけれど、いつまでもきらきらと
きらめいて輝いている・・・。いくつもの自分だけのお城を持つ
少女は、そのお城のなかで、だれでも王女さまなのだ。