撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

一緒にピアノを弾こう(純情きらり)

 桜子をみつめる達彦。いつもと変わらぬ優しさで話しかける
達彦。病を持つ桜子はもちろんつらいが、その桜子も、自分を
懸命に受け入れて、静かに微笑んでいる。そのけなげな美しい
桜子を支える達彦も、どれだけ辛いことか!


 早く良くなって家に帰ろう。そして一緒にピアノを弾こう


 自分の命と向かい合っているひとに掛ける正しい言葉など
ない。ただあるのは、そのひとに対する、確かな愛情を伝える
言葉だけだ。


 桜子が実家でピアノを弾いていた。達彦との連弾が聴きたい
と思った。大切に、ピアノを閉じたその桜子の手で、もう一度
ピアノを開ける日が来ることを、理屈でも理性でもなく、ただ
心の動くままに待ち望みたいと思う。


 私事だが、父が亡くなる数時間前、父にアイスクリームを
食べさせていた。おいしいなあ、みんなの分はあるのか?と
いう父に、特別のだからお父さんのだけだよ、というと、じゃあ
明日は僕がおごるから、みんなの分買って来なさい、一緒に
食べよう・・と会話したのが忘れられない。


 生と死は、どこかで逆転するわけではなく、密やかに、残酷に
時には優しくつながっている。命が繋がっているのと同様に・・。