撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

憎しみを研ぐくらいなら

 心理学の言い方だったか、「憎しみを研ぐ」という精神行為が
あるらしい。嫌いなひと、いやだった経験を、その感情とともに
何回も思い出すことによって、そんな風に心に刻みつけるらしい。
もともと、ひとは思い出すことをしなければ忘れてしまうらしい。
 忘れたいことは、考えないのが一番効果的ということだ。


 憎しみを研ぐことができるなら、幸せを堆積させることも、経験を
磨くこともできるだろうか?


 美しいこと、嬉しいことは、真珠が粒を大きくするように重ね、
いろいろな経験は、それが起こった意味、これから忘れてはいけないこと
がわかるように、鉱石を磨くように純粋に考える。生まれながらにして
美しい真珠も、磨かなければ光らないダイヤもあるんだよ・・と
私が読んだのは「ひっくりかえったおもちゃ箱」(山本鈴美香)だった。


 憎しみを研ぐくらいなら、いっそ忘れた方がいいのかもしれない。
しかし、憎しみすら、ただいたずらに研ぐのではなく、自分の思うかたちに
磨き上げることができれば、かけがえのない経験、大切な思い出にすること
ができるのかもしれない。