撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

想いは通じるよ(純情きらり)

 笛子がさりげなく言ったひとこと・・。音楽から開けた
ことで、新しい一歩を踏み出そうとしている桜子に向かって。
桜子のその一歩がどちらの方向を向いているのかは、まだ
よく分からないけれど・・。


 今日の笛子は好きな笛子だった。冬吾や桜子とは違う世界を
持っている。それでも、冬吾が絵を描くことを誰よりも楽しみ
にしている。その底に流れる気持ちは、以前となにひとつ変わって
ない。でも、冬吾の全てを理解するのは無理だし、自分の考え方を
冬吾と同じように変えることも無理だともう理解している。私は
私のやり方で、冬吾を応援する・・と。


 もちろん、桜子が冬吾にいまどんな想いを抱いているかなど、
想像もしていない。桜子と冬吾が仲が良くって、自分にははいれない
世界があることはもう知っている。それでも、冬吾が絵を描くために
それが必要なら、二人が自分とより一緒にいてもいいとすら思って
いる。・・冬吾を愛するが故だ・・・。


 強いなあ・・と思う。もちろんそれは、冬吾の妻であり、かけがえの
ない子供たちがいて、冬吾もその家族のことを一番に想ってくれて
いるのを確信しているからこそ出来ることだけれど。そして、相手が
自分の家族、妹だからこそ、そう言えるのかもしれないけれど・・。
 それでも、その潔いたたずまいは、あの教壇に、背筋を伸ばして
立っていた笛子を思い出させた。


 音楽がその音の美しさそのものを伝えるのに対して、絵というものは
なんて目に見えるものを伝えてしまうのだろう・・。冬吾が描き始めた
絵を見た桜子は、自分ではないか・・これは一体どういう意味を持つのか、
と考えてしまっただろう。冬吾の想いを置き去りにしたところで・・。


 想いは届く・・とわたしも思う。いつかかならず、いつかどこかで。
ひたすらに、純粋に思いつづければ、透き通って、きらめいて、いつか
磨かれたダイヤモンドのように、きらきら輝いてくれると思う。
 本当に自分が求めていたものは何だったのか?本当に欲しかったものは
どういうことなのか?それがはっきりと分かるためには、まだまだ
苦しいことがあるのかな・・・まだ、泥だらけの状態なんだろうな・・。