撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

お盆の用意をしながら

 朝からお盆の用意をしていた。といっても、特にお客さんが
来るわけでもないので、ほんとにご先祖様を迎えるために、掃除
して、仏壇まわりに、ちょっとばかり飾り付け(?)をするだけ。


 小さいころは、家には仏壇がなかったのであまりなじみがない。
お盆といえば、おばあちゃんちに遊びにいって、ごちそうをいた
だいたり、いとこたちと遊んだりしてただけ。


 母が亡くなってからうちでもお盆に迎え火を焚くようになった。
あさがらの淡い色をしたはかない炎が淋しくて、涙が滲んだのを
覚えている。


 父もなくなり、私にも新しい家族が出来ていたことを本当に
感謝した。ひとりでは耐えられなかったかもしれない。母の
いない寂しさがようやく埋まったと思えたのは、我が子が生まれた
頃。父も母もいない寂しさはまだ時折顔を出すけれど・・・。


 それでも、今年はお盆の行灯を組み立てながら、昔のことを
懐かしく思い出していた。何故だか思い出したのは、小さい頃
毎月本屋さんから雑誌を届けてもらったよなあってこと。付録の
ついた小学生向きのやつ。届くなり、広げて、母に「こんなところで
店開きしないで!」なんていわれてたのをおぼえてた。ずっと
忘れてたのに・・。


 淋しいのは、幸せだったからだ。そう思えるようになったのかも
しれない。いつまでも寂しがっているのはやめて、目の前の自分の幸せを
紡ぎだしなさい・・そう云われているのかもしれない。


 昔、大好きだった「大草原の小さな家」のドラマでのおはなし。
子供を残して亡くなっていく母親が残した手紙・・。
「私を思いだしてくれるなら、どうぞやさしい思い出と笑顔とともに
思い出してください。涙とともにしか思い出せないのなら、いっそ
忘れてください」と。とても難しいことではあるけれど、いつかきっと
楽しく、優しい思い出になる日はくるんだ。それほどに、人間は
強く、時間はやさしい・・・。