撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

もう一度信じてみませんか?(純情きらり)

 桜子がかねに言う。
もう一度信じてみませんか?達彦さんは生きていると。


 人と人の繋がりって不思議だ。血のつながりはもちろん強い。切った
つもりでも、思いがけないところで、繋がっていると思い知らされたり
する。逆に、どうしてこの人とこんなにひかれるのだろう・・と思う
こともある。


 信じること。心を通わせること。ただそこに生まれただけで出来る
つながりもあれば、大事に大事に育むつながりもある。桜子は達彦への
想いを静かに、深く持ち続けることから、かねとも、かけがえのない
絆を結んでいった。達彦のためだけでなく、自分でかねと向き合ったから
こそ、実の親子に勝るとも劣らない、純粋なつながりが芽生えたのだと
思う。


 最初は、子供じみて、考えなしで、行き当たりばったりの桜子が嫌い
だった。笛子の苦労が不憫だったし、かねの怒りもよく分かった。自分
が一番で、回りが見えていない、回りのことを考えずにずんずん突き進む
桜子が、憎たらしかった。ある種のうらやましさもあったのかもしれない。


 「達彦さんに思えませんか?」と言われても、それは無理だろうって
かねさんと一緒に鼻で笑っちゃったよ、正直言って。
 ・・でも、いまはその奥の優しさが見える。そんな突拍子もないこと
いうのは、かねさんがいうように、桜子が不器用だからだ。決して
要領のいいこじゃない。でも、なんの駆け引きもない、純粋な想いが
溢れんばかりにきらきらしている。こんなに、損得勘定も、ものごとの
後先さえも考えずひとのために何かを出来るってすごい。人のためだって
ことすら考えてない。自分のためだって言ってる。おまけに、「我が儘
なのかなあ?」って思えるくらい成長してる。


 彼女は何が起こっても、前を向いて進んでいくだろう。そして、ともに
歩むひとを思いやる心の深さを持ちつつある。ほんとに、このドラマは、
子供が大人になっていく姿を描いていってくれるのだなあ、と今一度
思う。だれが言った言葉だっただろう・・。大人になるってことは、すれ
からしになることじゃないんだ、柔らかな、傷つきやすいこころをそのまま
もって大人になっていいんだ・・って。そういうやわらかい心を大切にして
いなければ、いい作品なんかできないんじゃないかって。(何かものを作る
お仕事をしている方のお言葉だったんですね)


 桜子の言葉が胸に響く。「もう一度信じてみませんか?」
あきらめたこと、慣れてしまったこと、いまさら恥ずかしくっていえない
こと、それでも、心の中で、大事にしていることがあるのなら、もう一度、
素直な気持ちになって、その宝物を手に取ってみよう。自分の気持ちと
正直に向き合ってみよう。
 ・・明日を生きるために・・・。自分の生を生きるために・・・。