撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

笛子と冬吾(純情きらり)

 冬吾が、絵をかけるようにと心を砕く笛子。とおるを連れて
働きに出る。冬吾に知られないように。夜泣きをするとおる。
おかしいと思う冬吾は、笛子から事実を聞き出す。今度は
冬吾が職を探し、肖像画の仕事と偽り、鋳物工場に働きに出る。


 ふたりとも、相手のことを思っているのに、家族のことを
大切にしているのに、どうして直接向き合わないのか?他の人
にはしゃべれることが、どうして相手にはいえないのか?言うとき
はどうしていつも言葉が足りないのか?


 夜中に笛子と冬吾が話した場面があった。冬吾さんの言葉は
もっともだけど、笛子はたまらなく切なかっただろうな、と思った。
子供のことは、笛子だって考えてるし、子供に無理をさせているのも
百も承知だけれど、冬吾さんにそれだけを言い放って欲しくは
なかったな。せめて、桜子に言ったことを、どうして笛子に言えない
のか?子供が愛しい、子供を守ってやりたい・・と。おれが、家族を
守ると。絵はいつでも描ける、家族を大事にしながらでも・・・。
おれは、今はそうやって描いていけばいいから・・と。


 昨日見たあとは、笛子はひとに尽くす性格が時代と相まって行き過ぎ
それと気づかぬうちに、自分の望みと冬吾の絵を重ね合わせ、ある意味
依存しているのではないか、と考えた。自分の生き甲斐を、冬吾に求め
ているように思えたから・・。自分がない・・というのは、自分が望んで
やっているようで、実はもう自分でコントロール出来ないほどに、冬吾
に尽くすことに依存している・・・と言う状況のことではないかと。


 今日感じたのは、このひとは、笛子は寂しがってる、ということ。
冬吾さんに尽くしても尽くしても、自分が一番になれない、少なくとも
冬吾からそういう扱いや言葉をきちんともらってないように感じて、
片思いのまま寂しがってる・・と思った。自分が自分の意志でやってる、
好きでやってる、と思っていても心は弱いもので、よりどころになるものが
なければ、いつまでもふらふらと定まらない。一番好きな人に、一番
大切だと言ってもらえなければ、その先に進めない。すべてが宙ぶらりんの
ままだ。子供とだって正面きって向き合えない。女とはそういうものだ。
いや、笛子はそういう種類の女だ。理屈がわかって、正直もので、いい加減
なことができなくって、ひとの陰口なんかいえなくって、嫌いな人とお愛想
でつきあうようなことができなくって、おもても裏もない、一本気なおんなだ。
不器用なほどに・・・。


 「おれの前で怒れ」と言った冬吾さんの前で、自分の気持ちを抑えて
怒れなくなっている笛子。笛子が本当に求めているものは、成功でも
名誉でもなく、愛する人から認められることと、ささやかな幸せ・・
そんなものだと思うのだけれど・・・。