撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

愛する人のために(純情きらり)

 あんなに大変な状況だったのに、笛子さん、無事出産出来て
よかったね!磯おばさん鼻の頭くろいまんまだし・・。いつも
男は役に立ちません。女は自分で乗り越えるしかありません。


 笛子の「生まれました・・」と言った笑顔が良かったな!なんで
この人はこんなに凛としていられるのだろう?背筋を伸ばして古文
の授業をしていた姿、汗を拭いながら洗濯をしていた姿。その清々しさ
のままで、布団の中で笑っている。笛子は迷っていない。描けない
状況を冬吾の気持になって憂いているだけだ。彼女は、冬吾の苦悩
までも含めて彼を愛している。そして、愛する人のために苦労する
ことなどなにも苦にしていない。冬吾と子供達に囲まれて笛子は最高
に輝いて見えた。彼女を昨日みたとき、「ただそこに存在する」ような
透明感を感じたのは、愛する人の幸せを自分の幸せにするような、
無我のたたずまいを漂わせていたのかもしれない・・と思った。


 描きたくても描けない、描いても誰にも見て貰えない、そんな
冬吾たちの苦悩を目の当たりにした桜子は、笛子が自分のためにと
とっておいてくれた花嫁衣装を、展覧会開催のために使ってくれと
申し出る。辞退する冬吾。しかし、笛子は決心したように手を伸ばし
着物を掴み自分へと引き寄せる。桜子に礼をいい、使わせてもらうこと
を決める。着物の包みを握りしめる笛子の手の動きが目に焼き付いた。
 いつも、この人は自分で決める。しかしながら、こんなにも、何かを
自分のものにしたい、と引き寄せたことがあっただろうか?いつも、
人のことを思い、我慢したり、譲ったり、あきらめるための決心を
してきたこともいっぱいあったことだろう。その笛子がこころのままに
これは自分のものにする、と自分の手で強く握りしめたのだ。


 笛子も、この着物が初めから桜子のために用意したものだったら
決して手放さなかっただろう。これを持って達彦さんを待つのよ・・
と言ったことだろう。しかし、これは母の形見。3人誰がもらっても
おかしくないもの。いままで何度必要になったかもしれないのに、
なんとか長女として守り通してきたものなのだ。


 やっと、3人の女達として姉妹が生きていくのだな・・とも感じた。
守るべき小さな妹だった桜子も、姉に頼りにされるほどに成長して
きた。笛子は、長女の枠にはめられることも、年上ゆえに遠慮したり
我慢したりすることもなしに、ただ、彼女の、その、ひとに尽くす
心持ち、働くことを厭わぬ性格そのままで、これからも、家族に愛情を
注いでいくのだろう。今までの家族にも、そして、いま彼女をだれよりも
必要としている、笛子の新しい家族にも・・・。


 磯おばさんの秘密については、また今度!でも女学生にはびっくり
しました。でもって、フランスに行ったことのない方の予想はやっぱり
ちょっと違うんじゃない?