撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

その12過ち

 どうしてこんなことをしてしまったんだろう


 どうしようもなく後悔している。もう二度と逢えない。
逢いたくない。逢いたくない。逢いたくない。
二度と逢いたくない。


 あの時間だけでよかったのに。あのときの我が儘だけで良かった
のに。あのわたしだけで良かったのに。


 本当の私なんかじゃなかったんだ。あのひとのまえのわたしは
あのひとのわたし。あのひとがすべてを知っているなんて思って
たら、それはとんでもないいかさまだ。わたしはそんなおんなじゃ
ない。わたしはそんな人間じゃない。


 わたしは生身の人間だ。人形でも猫でもない。


振り向いたときいないからって安心しないで
思い出したときだけ優しい声で愛してるって言わないで
・・そんなこと、そんなこと、どうして考えるの?


 見なければ良かった。わたしが隣りに居ないときのあのひとなど。
 見せなければ良かった。あなたと逢っていないときのわたしの
気持ちなど・・・。


 まいにちひまわりみたいでわたしはめまいがしそう
覚悟をきめて愛していたはずなのに・・。いいえ、これは恋愛だと
いつ言ったかしら?そんなもので括れないと思っていた。でも今、
恋じゃないなら私は・・・消えたい・・・。
あなたのこころと背中に決して消えない爪痕を残して・・・。


 決して立てたことのない爪を立てて、あなたに抱きついたら
いったいどうなるのかしら もしそんなものが残せるならいつ消え
たって心残りはないのに・・・。それは、本当の気持ちかしら?
そんな見事な傷跡ができれば、きっとそれをずっと見ていたくなるに
違いない。私が愛しているのはほんとうにあのひとなの?


 あのひとが自分のことを愛しているように、私も自分を愛している
だけではないの?いったいひとを愛するというのはどういうことなの?