撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

千人針(純情きらり)

 物言わぬ人の想いが強いことがある。物言えぬ時代の愛情表現が
ある。今日の純情きらりを見ながらそんなことを思っていた。


 戦争になんか行かせたくなかった。戦争の用意なんて手伝いたく
なかった。千人針なんて、それを持ってたら鉄砲の弾が当たらない
なんて信じてもいなかったし、みんなして兵隊さんを送る定番の
アイテムのひとつにすぎないと思ってた。


 おんなたちは、どんな想いで数限りない玉結びを縫いつけていた
ことか!口に出せない言葉のかわりに、居ても立ってもいられない
気持ちをなだめながら、唇を結び、涙をこらえ・・・。
 帰ってきて!死なないで!逃げてでも這ってでもわたしのもとに
帰ってきて!死なないで帰ってきて・・という当たり前の気持ちすら
口に出せば「非国民」といわれた時代・・・。


 キヨシの問いかけは、達彦の本心を聞き出そうとの想いからだろう。
そうして、たまらず達彦をなぐるキヨシ。それを受けて殴り返した
達彦の思いは、キヨシの考えを越えた深いものだった。
「おまえだって、好きな娘を未亡人になんかしたくないだろう?」
愛し合っていたが故にあきらめた恋人たちもどれだけいたことだろう?


 かねさんも達彦の入営にあたり、お店のことを考えると、どうして
いいか分からない状態。それでも、我が息子の姿を見ていると・・・。
 大変な時代だからこそ、大切なことが見えてくる・・ということも
あるのだろう・・・。