撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

季節の変わり目

お昼過ぎ
いい天気
車で仕事場へ


なにか思い出しそうな気がした


「は  る   ・・・  春   だ」


日差しが車の中を暖めるのはよくある話
温度だけでなく
なにかが・・・春・・・だった


ひとつひとつははっきりとしない思い出が
春という共通項だけを頼りに一気に押し寄せる
懐かしくて
切なくて
幼くて
儚くて
幸せで
・・・やっぱり涙が出そうなほどに切ない




青空に枝を伸ばす桜の木からピンク色が立ち上り始める頃
ああ・・・今年ももうすぐ春がくるのだなと・・・


入学式のために用意した洋服だとか
旅行を待つバッグのかたちだとか
卒業する先輩に贈る品物の準備だとか
一緒に見られなかった桜だとか
まだ冷たいはずのに温かく輝く波打ち際だとか



母が亡くなった日に
縁側のガラス戸を開けて
なにか思ったことを思い出したり



季節の変わり目の気配に
記憶の引き出しが際限なく開く
こころのなかの衣替えでもするつもりなのか



それでも
これはすべて捨てない
捨てたつもりの思い出すらも
きっとどこかで小さく折りたたまれて
ひっそりと大切にわたしのかけらをつくってくれている



http://www.youtube.com/watch?v=DKRE59DWsxw