撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

彼を思い出すとき

テーブルの上にひときれ残ったパンが置いたままになってる
朝ごはん、みんなで食べた後の名残
昼間にそれを見つけて
彼がいるころはこんなことなかったな・・って思う


日曜日の昼下がり
なんだか庭で声がしたような気がして
ふと振り返る
そんなことありえない
家族で楽しそうにしゃべっていると
それに加わるかのように
甘えた鳴き声を出していた彼はもういない


暑い暑い夏
動物園の動物たちも大きな息をしてなんとか凌いでいる映像を見て
庭で彼に日陰をつくりながら過ごした昼下がりを想う


忘れたわけでも消えたわけでもない
心の水底に静かに静かに沈んでいっただけ
光がつくる波の鱗のように
ときおりきらめいては
私の心をいっときぐいと掴んで離さない


いることが当たり前だったことの
そこにいないことのなんという存在感・・・
いなくなったその場所が
わたしに大切なことを語りかけている