撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

男前

 テレビで東福岡と東海大仰星ラグビーの試合を観る。花園もはや準々決勝。東の選手たちはひと試合ごとに自信と余裕を積み重ねているように見える。谷崎監督の笑顔が、「今日はこいつらどんなことやってくれるんやろうか?」というようなわくわくに見えて好感が持てた。まさにテレビの前で私もそんな気持ち。


 とはいえ、相手チームも素晴らしいチーム。前半の終わりがけからリズムをつかみ始め、後半は本当にどちらに転がるかわからないようなゲーム展開。それでもなぜか東が負ける気はしなかったし、よく感じる胃の痛くなるような苦痛もなかったけれど・・。


 ただ、ラグビーってやっぱり男のスポーツだって思った。激しいぶつかり合いでその身を投げ出す姿を目にする時には、母の気持ちになってしまって、もしわが子だったら・・それでもこの試合を直視できるだろうか?と考える。ゲームはスポーツとはいえ、まさに真剣勝負、命を懸けた戦いだ。何が起こるかまったくわからない。すばらしいプレイを賞賛しつつも、一瞬その身を案じてしまう。


 そしてある時は女として・・この誇らしい戦士たちをまぶしい想いで眺める。自分の今の力をすべて出し切るような激しいプレイと、敵味方で、手の内を図りながら、真剣勝負のそのさなかで余裕の微笑みを交わしあうような男同士の関係を、入れない世界と思いながら、その戦士がわが胸に戻ってきてくれた時にはどんな思いで抱きしめたくなるか・・。いずれもっと大きな世界にはばたく未来の男として彼らたちは輝いている。


 東海大仰星の素晴らしいプレイと、それを凌駕する東の強さに感服。思えば、3年前の花園でのこの2校の試合も素晴らしかった。結果は反対だったけれど。


 準決勝、決勝と、すさまじい戦いが続いていくのだろう。母でも恋人でもないことをこの時ばかりは感謝しつつ、彼らの戦いをこの目に焼き付けていきたいと思う。本人たちにすれば、勝つと負けるとでは天と地の差の大変なことだろうけれど、こんなに素晴らしい試合をみると、そんなことは大きなことではないと思えてくる。それよりも、こんな試合を体験できること、こんな試合が存在すること自体がとてつもなく素晴らしいことなのだ。少なくとも、時間が経ったときにはそうだと思えると確信する。そんなラグビーを見せてくれる男前の彼らに感謝。そう、高校でも大学でも社会人でもそうだけれど、精一杯の力を、仲間とともに全員で出し切るラガーマンたちは本当に「男前」という言葉がふさわしいほどに輝いて見える。