撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

自分だけの空間

 家の中を片付けてたら、小さなテーブルの行き場がなくなったので、廊下の隅に
置いた。ついでに椅子もセットで。そうしたら、それを見つけた次男が自分のゲームを
そこに持ち込んで楽しんでいる。今朝見たら、カーテンを引っ張って画鋲でとめて
ちょっとした密室気分を味わっている。えらく気に入った様子。それなら一人掛けの
ソファを置いてあげようか?というとうんうん!とすっごく嬉しそう。


 その笑顔に動かされてしまった母は、掃除機をかけ、あまり布と小さな本棚で仕切り
を作り、わずか一畳半ほどの彼の部屋をこしらえてしまったのである。そういえば、
彼のいままでの部屋と言えば、中2階の空間はどこか居間とつながっていたし、
もうひとつ場所替えした部屋は洗濯物を干す場所と居間の間にあって、いつ人が
通るか分からない、彼にとっては自分だけのものとは思えない部屋だったのである。


 つくづく思う。部屋が要るんじゃない。自分だけの空間が要るのだ。たとえどんなに
狭くても、そこが自分の好きに使える安心できる空間ならそれはそれでいいのだろう。
まずはその居心地。いずれ、自分の携えるものが大きく、多くなっていけば、それは
そのとき場所を広げていけばいい。今の彼には、家族の中で好きに動きまわることと
自分だけの一畳半ほどの空間。それくらいの状況なのだろうな。きっと彼の心の中も
そうなのだろう。好き勝手を言って、いい加減なことばっかりやってはいるけれど、
ほんのすこしだけ、触れられたくない大事な場所ができてきているのだろう。それを
認めること、大事にしてやることが、一緒にいるときにおだやかに、仲良くできる
ためにはだいじなことなのだろうと思う。