撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

愛すべき花と進むべき道(白洲次郎)

 正子が次郎に抱きしめられたときに見せた表情がなんともよかった。
一瞬の驚き、どうしようかという戸惑い、自分の感情を表すためらい
あふれてくる心・・・。喜びを喜びと・・愛情を愛情と認識し、確認し
受け入れ、溢れさせるまでのなんと難しいこと!なんと瑞々しいこと!
 整然と造られた水路に初めて水が流れ込む時のようなそんなことを
思った。
 自分の心をストレートに素直に顕す次郎は、それだけで上等なジェン
トルマンに違いない。


 戦争時の悲しみはこのドラマにも出てくる。召集令状をおめでとうご
ざいますと届け、ありがとうございますと受け取る場面は悲しい。
 政治は政治家がやるもので軍人がやるものではない。農民には農民の
職人には職人の学者には学者のやるべき仕事があり、そんなひとたちを
戦争に駆り出すのはまちがっていると。
 あの時代にお国のために・・と命を投げ出した人は、決してお国の
ために死んだのではないだろう。そうすることが、なにより家族が生き
ていくうえで一番安全な道だったから・・。愛する人を守るために戦地
へと赴いたのだとすれば、戦争で敵であったものは、敵国ばかりでなく
自分の国の中で渦巻いていた人々の悲しみが化けた憎しみの心だったの
ではないだろうか。


 ひとにはそれぞれにやるべきことがある・・・。それを間違えないこ
と、きちんとつとめを果たすことはきっと幸せにつながるはずだ。