撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

元気がないと

 すべて投げ出せればいいのにと思うときが時々ある。いま欲しいもの
だけを手に握れればいいのにと思うことが時々ある。


 しかしながらそうはいかないのが大人の世界。そんなことをするには
それなりの覚悟をしなければならないのが人生というもの。


 ほんとうはすべてを捨てたいなどとは思っていないのだ。自分に都合
の悪いもの、いま欲しくないものだけどこかに隠しておきたいだけなの
だ。それもすべて持ちすぎてしまった自分のせいだというのに・・。


 毎日抱えて登校した学生カバン。日に日に重くなっていく抱っこひも
の中で笑う赤ん坊。七つ道具のように役員の書類を抱えて通った日曜日
ラグビーのグラウンド。重かったけれど、時々溜息をつくほどだった
けれど、決して手離したいなどとは思わなかった。毎日が、問題だらけ
ではあったけれど、人に会うのが楽しかった。


 そうか・・。結局はひとなのだ・・と思う。けんかしてでも仲良く
なりたいと思えるかどうか。どんなことをしながらも、自分の場所を
きちんと持っていられるか・・・。


 何が大切なのかもういちど考えてみよう。どちらを向いていなければ
いけないのかもういちど考えてみよう。いろいろなひとがいる。みんな
考えていてくれてはいるけれど、重病人にのどにつまりそうな苦い苦い
飲み込みにくい薬を無理やり詰め込んで走り去っていくようなそんな
相手だってたまにはいるんだ。


 元気がないときには、どんなごちそうも受け入れられない時がある。
お見舞いに果物の籠を贈るわけがすこしわかったような気がする。どん
なときにも自然のものはエネルギーをくれる。食べなくても、その
美しい輝きを見るだけで嬉しくなることがある。素直な言葉が一番。
励ましよりも、ただ受け入れてくれるだけのほうが力になるときも
ある。


 こんなに追い込まれて落ち込むことにも意味があるんだ。きっと・・
私より、弱っているけれど、素直になれない、そんなひとの気持が
少しだけわかったような気がする。強い自分は弱い自分を忘れてしまう
から・・。今度はどちらの自分もいることを覚えていようと思う。