撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

待つという愛情(ちりとてちん)

 菊江さんが仏壇の代金は小草若に払ってもらうと若狭が
差し出した封筒を受け取らなかった場面。小梅さんが、糸子
さんと子育ては・・という会話をしたときのことをふと
思い出した。小次郎さんがダメダメちゃんの代表のような
言われ方をしたときに笑顔のまま「まだわかりまへんよ」と
つぶやいた小梅さん。あのひとことは子供を愛するひとの
子供の可能性の限りなさを信じているひとの言葉に聞こえた。


 ともすればひとはこんなものだと区切りをつけたがる。ど
こかであきらめてこの程度・・と悟った顔をしたほうが楽な
ときもあるから。困ったちゃんとは縁を切った方がハラハラ
したり思い悩んだりしなくて済むものだもんねえ・・。


 それでも・・何を期待するわけでも、特別な高望みをする
わけでもなくても、ただ見守り続け、成長していくことを
待つ・・そういう静かな愛情があると思う。


 最善の道を選ぼうとするときに、確率の低いものから
切り捨てていくのは安全な道だ。しかしながら、一番いいもの
がすべてのひとにいいものだとは限らない。立場によっては
そういうやり方をしなければならないひともいるだろうけれど
どうしても捨てられないものを手放さないという道もまた
あるのだと思う。ちいさな集団のなかでもそんな相反する
考えをまとめなければならない時もあるのだ。どちらを選ぶ
ことも決して楽ではないこともあるのだ。


 正しいと思っていることすら、すべて正しくすべてのひとに
優しいわけでもなく、光が射せば影ができるように、決めつけて
しまうとそこからはみ出してしまうものがあるような気がする。


 小浜に現れた小草若にいったい何が起こるんだろう?誰と
出会うんだろう?たわいないのう・・って言って和めるような
そんな暖かい空気が彼を包んでくれるといいと思う。