撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

いつか・・・(さくら)

 いつか・・また・・あえますよね・・わたしたち


 学校の、だれもいない靴箱の前で、やりとりをして握手をする
さくらと桂木。つないだ二人の手がやけに美しかった。さくらの
意外と細長い指の手のひらを包み込むこれまた白くきれいな
桂木の手・・。一瞬の静止・・・。


 このまま、繋いだ手を引き寄せれば抱きしめられるのに・・。
その手はほどけて、取り残されるさくらの手。一瞬の悲しみを
振り切るように敬礼をしてさよならする二人・・。


 サンキューエリザベス!さよならエリザベス!・・・学校を立ち
さろうとしたさくらに向かって校舎の高みから子供達の声が溢れる。
その中に一緒に立ちながら、表情ひとつ変えずに見送る桂木。そして
子供達にこたえたあとは、まだ続く声の中を振り返ることもせずに
歩いていくさくら。


 心が動きすぎるときは何も出来ないことがある。ちいさな揺れで
すべてをひっくりかえしてどうしようもなくなりそうで、そんな
自分のこころをどう扱ってやっていいのか分からずにただじっと
まっすぐに立っていることしか、ただ前を歩いて静かに歩いて行く
しかできないことがある。言葉を発することもできずに・・笑顔を
つくることすらできずに・・・。


 いつか・・・その遠い約束は、祈りのようで、静かではあるけれど
ときに、とてつもなく悲しみに満ちている・・・。