撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

ほんとうの心

 「ほんとうの心に気づかせてくれてありがとう」


 柾樹が夏美にそう言う。憎しみの奥には、切り捨ててしまいたいと
思うものの奥には、自分の淋しい心がひそんでいたこと・・。


 ちいさな子供のようなそのほんとうの心を大事に抱きしめてやれば
後ろを振り返らずに生きていくことが出来る。ひとを憎んだり羨んだり
することなく、自分の思うままに生きていくことができる。


 夏美自身は、じぶんそのままではそんな淋しい柾樹の心に気づく
ことは出来なかったかもしれない。自分が知らないことは、考えも
しないことは、どうやっても想像できないことがあるから・・。


 風の又三郎のような不思議な少年は、そんな夏美に柾樹のこころを
教えるために姿を現したのかも知れない。


 不思議な出来事
 思いがけない出来事
 想像を遥かに超える出来事


 どうしてこんなことが起こるのだろう・・と不思議でたまらなか
ったり、あまりに許せなかったりすることは、もしかすると、自分
だけではどうしても気づけないことに気づかせてくれるために起こる
大きな意味のあるプレゼントなのかもしれない・・。