撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

故郷(ふるさと)

 明け方に少し泣いた。


「あなたのいる、ここが、わたしの故郷だ」
と言ったのは誰だった?


 誰もいない昔のわたしの部屋でひとり声を殺して泣いた。そうだ、
わたしはずっと泣きたかったんだ・・とひとりで思った。わたしの
故郷は、泣ける場所のことだ・・と思う。誰にも何も理由(わけ)を
説明せずにひとり泣ける場所があることがしあわせ・・。今のところ
「人よりも家につく」猫のようだ・・とちょっぴりおかしくなりながら
何度も涙を流した、昔からの場所で少し泣いた。