撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

争うつもりはない(どんど晴れ)

 翼の母から加賀美屋へ、訴訟の書類を持って弁護士がやって来た。
慌てる伸一たち。大女将は悠然と言う「お客さまと争うつもりは
毛頭ありません・・」ただ、誠意を尽くして謝るだけだと・・。


 夏美と智也が話している。智也がサッカーをやめたわけ・・。
3年生の最後の大事な試合で失敗して負けてしまったこと、そのこと
について、仲良しだと思っていた仲間が心ないことを言っているのを
聞いてしまったこと・・ダブルパンチ喰らった気分・・だと。神木
隆之介くんの声の出し方はいい・・夏美役の子と比べると、なおさら
その自然に変わる声色、声の調子がいい・・。夏美ちゃんが、いちいち
肩に力入れて意識して声出すのは、まあその一生懸命な性格に似合って
るって言えば似合ってるけど、時々わざとらしいかな?(笑)沢口靖子
の若い頃の大根ぶりを思い出させてくれます。


 翼の母が夏美を呼び出す。夏美の翼との接触をいったい誰のさしがね?
と決めつける。見せかけ・・だとか、同情をひく・・だとか、誠意の
押し売り・・だとか、愛子が口にする言葉をそばで聞いているほうが
切なくなるほどに、彼女の中でいったいどんな苦しみがあるのかと思う
ほどの悲しさだった。息子を傷つけられること、奪われることに関して
どうしても許せない、争ってでもはっきり責任の所在を明らかにする、
その執拗なまでのこだわり・・。あんなことをしておもてなしの心を
売り物に老舗旅館の名を名乗っているのが許せないのよ!という愛子の
心の奥には、なにか深い傷か強い怖れがあるのかと思うほどだった。


 そして、そのこだわりは時に目の前の息子の存在すら超えてしまう。
息子のため・・といいつつ、本当は自分の中の何かに突き動かされて
いるのではないかと見える母。翼がついに、母へ声を上げる・・。
 争うつもりではないのだ・・。だれも、自分のために争って欲しい
人などないのだ・・・。争いの奥にあるものを見つめ、争いの先に
あるものを目指したい・・。