撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

計算する(どんど晴れ)

 夏美が盛岡を出た。残された人々はいろいろな思いを胸に抱く。


 もう少し我慢してくれたら・・という大女将。自分の指図した
いろいろな責任の取り方は充分考慮したうえでのこと。今までの
夏美を見ていて彼女がそうやったときにどう行動するかも彼女の
中では計算した上だったことに違いない。ただひとつ大女将の
計算が狂ったとしたら、それは女将が夏美に投げつけた言葉。その
言葉を、大女将はしらない。。


 女将が大女将に夏美はいたたまれなくなったのでしょう・・と
話す。もっともな話。それでも、自分が夏美に言った言葉は告げない。
大女将の意のままにはならない女将の小さな反抗にも似た計算。その
計算が自分にとってどんな意味を持つのかほんとに望むことに向かう
ための計算だったのかは、女将自身すこし迷いを持つような・・。
 流れに逆らう何かを起こす時はとてつもない力が自分にかかる。


 柾樹の元カノ、なかなかのオンナ・・。美貌と頭脳を持つオンナは
こんな風に自分のことを計算して見せていこうとするんだ。計算どおり
に行けばこのうえなくスマートで美しい。ただ、本当の関係は計算を
超えた部分にあるような気もする。


 夜の街をあてもなく、夏美の名を呼び探す柾樹。このひろい都会の
どこにいるというのか・・。それでも愛しい人の名前を呼ぶ。
 こんなにに都合良く出会うはずないじゃん!と思いつつも、また
一方で思う。探さなければ見つからない。呼ばなければ気づかない。
計算することも忘れ、ただ大切なものを求めることからしか、本当の
物語は始まらないのではないのか・・と。


 夜の街に大きな光を放ちながら観覧車が廻る。夏の夜空の花火の
ように・・。単なる街のイルミネーションなのか、儚い花火なのか
それとも消えない記憶を残すふたりの星になるのかは・・・それは
ふたりにしか分からない。計算も思惑も、もうすでに超えている。