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「美卯はさみしがりやだから」とわたしの肩を抱いて
あのこはつぶやいた。大事なものを守るように、自分の
ジャンバーをわたしのからだに掛ける。歩きにくいよ、
と思うのだけれど、まあ急ぐ用事があるわけでもないし
いいか、とされるままにしておく。
「美卯ってウサギみたいだ。うさぎってさみしいと
しんじゃうんでしょ?」と、どこかで聞いてきたようなことを
耳元で囁く。ふ〜ん、そうなんだ・・って返事しながら、
わたしは心のなかでつぶやく。「うさぎって、肺が小さいから、
強く抱きしめられちゃうと、そっちの方が危ないんだよ!」って。
あのこといるときのわたしは、ちいさなウサギだった。今まで
ついた嘘で、いちばん優しくて可愛い嘘だったかもしれない。