撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

言葉に出来ないもの

 久しぶりに美術館に出掛ける。たくさんの絵に囲まれて物言わぬ
時間を過ごす。同じキャンバスに同じ絵具を使って描いたであろうに
何故これほどまでに違う絵が出来るのか?


 絵の前に立ちつくし、何かを感じているであろう人々。誰かと
ともに訪れるのなら、好きな絵を教えあったり、感想を語り合ったり
するのも楽しいだろう。映画を観た後のように・・。


 それでも言葉にした途端に、それは少し違うような気もする。
だから、絵というものがあるのかしら・・・?文章であらわしたり
絵や彫刻であらわしたり、あるいは音楽であらわしたり・・・。
それは、表現者の違いでもあるけれど、何かの作品がそこに伝える
ものを持つとしたら、それはそれ以外のなにものでもそれを伝える
ことは出来なかったんじゃないかと思わせられる。


 美術館の大きなガラス窓ごしに木漏れ日が揺れてモノトーンの絵を
描いていた。決して写し取ることなど出来ないその風景は、私だけの
今日の忘れられない一枚になった。