撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

てばなせへん(芋たこなんきん)

 好きなもの、どうしてもなりたかった職業。一生つきあいたい仕事。
そんなもの、簡単に手放せるものじゃない。迷いながら、悩みながら
それでも捨てきれずにそこに立ちすくんでいる。そして、何度かそんな
気持ちを乗り越えながら、だんだんと確信していくのだろう。
「てばなせへん」と。


 婦長の言葉も印象的だった。悲しい場面に遭遇することも避けられない
看護婦という仕事。
「そういう仕事ですから」
「何度あっても、慣れるということはありません」
この、どちらもを、同時に言えるということが、この仕事をきちんと
自分で選んで、きちんと日々向き合っているということなのだろうな
と教えられた。茨木のり子さんの詩を思い出す。いつも咲きたての薔薇。


 晴子が町子にただひとこと「ありがとう」というその二人の関係が
好きだ。手術を頼まれた晴子の背中を静かに「晴子さん」と押す町子。
そして、決心したとたんに、医者の顔になる晴子。


「好きな仕事だって、こんなに苦しいことがあるのに・・。好きじゃない
仕事にだって同じだけの苦労が必ずあります。どうせ苦労するんなら
好きな仕事で苦労したほうがいいじゃないいですか」本当にそう思う。