撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

その23 新しい幕

 新しい一日を始めるのは、舞台に出ていくときのようだ。あの緊張と
興奮。どんなに見知った人たちとでも、一瞬のためらいと、多少なりの
勇気を胸に飛び込むようにして出ていく。


 時折、幕が下りた気持ちになる。これで終わってしまった・・と
目の前が真っ暗になることがある。絶望?寂寞?それとも安堵?
めまいがするほどに何もない世界に一人放り出された気分になり、
あまりの恐怖にすることもなく、耳を澄ませ、感覚を研ぎ澄ます。
 やがて、自分の脈拍と体温を思い出す。生きている・・。それでも
わたしはこうして生きている。もしかすると、生まれる前にいた場所は
こんなところだったのかも・・などと考えてみる。終わりは始まり
果てしなく続く絶望と希望・・・。下りた幕も再び開くのだろうか?