撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

思い出を扱う責任(芋たこなんきん)

 町子と朝子。こどもたちの心を思って胸が痛い。小さい頃は
こんなに胸を痛めていた。あとで考えると恥ずかしいくらい何でも
ないことで、眠れなくなるくらい、思い出すと顔から火が出そうに
なるくらい、恥ずかしがったり、悩んだりしていた。大人になっても
ふと、あの頃を思い出す・・・。


 朝子ちゃん、まりつき上手いなあ・・。朝子は、ひとりぼっち
でいるときも、お母さんの店に夜更けに来るときもまりを抱えて
いる。町子が空想の世界で遊んでいるよりももっと孤独な心を
まりと一緒に抱えていたのかもしれない。町子は、どうにか自分の
心と折り合いをつけて、朝子に人形をあげようとする。しかし、
朝子は受け取らない。プライドなんて難しいものではない。でも
朝子だって言葉にならない、でも強烈な自分の気持ちを持って
いる。人形が欲しい訳じゃない!って。


 町子が泣く。町子は感じ取ったのだろう。自分が拒絶されたから
泣いたのではなく、朝子の心を傷つけていたことを確信してしまった
から、それが悲しくて泣いたのだろう。お母さんは、優しく町子に
話す。悪かったと思ったのならもう一度謝りなさい、朝子ちゃんは
町子の大切なお友達なんでしょう?と。


 朝子から手紙が届く。町子はようやく笑顔を取り戻すことが
出来る。お父さんが町子と朝子を撮った写真を差し出す。手紙と
一緒におくってあげたらいい・・と。二人の笑顔の写真だった。
二人の思い出を笑顔で残すことを許されたことは、町子にとって
どんなに救われることだっただろう・・・。


 おじいちゃんが、写真館のみんなに言う。わしら写真館の人間には
思い出を扱う責任がある・・と。それは、写真を愛する人には、それ
だけで理解できる言葉だったことだろう。そしてまた、おじいちゃん
が、写真を愛していることも伝わる・・。判断はわしの仕事や、そう
言うおじいちゃんのかっこよかったこと。町子にとって、おとうちゃん
が、安心して信頼できる、大きな存在であるのと同じように、おじい
ちゃんもまた、大きなおとうちゃんだったんだね。