撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

幸せは毒?(純情きらり)

 ひさびさ冬吾さんが主人公になりそうな気配。笛子も、生まれてくる
子供も大切で、岡崎での生活は幸せ、それは嘘ではない。嘘ではないの
だけれど、それでも、どこか本当の自分が何か違う、何か足りない、と
叫んでいるのではないか?


 笛子もまた、冬吾の本当の気持ちを知りたい、本当は東京に行きたい
のではないか・・と冬吾を思いやりながらも、生まれてくる子供のためには
今の生活を変えたくはない、東京なんか行きたくない・・と杏子たちに
思いをぶつける。笛子ねえが、あんなに自分のことで強くいうのは、初めて
聞いたような気がした。守るべき子供ができたから、なのかなあ。


 笛ねえの思ったとおり、冬吾は、桜子には本音をもらす。


 一番近い夫婦と言う関係でありながら、本音をいえない・・というのは、
おかしいと思われるだろうか?それでも、冬吾が桜子に絵に関しての思いを
漏らしてしまう気持ちはわかる。ひとはいつも、自分の思いを一番近い形で
共有できる相手をその事柄ごとに選んでいるのだ。芸術に関しては、桜子。
妻の妹という立場でも、大して頼りになりそうになくても、とりあえず桜子。
(そう、心に秘めたものと、隠れた才能はともかく、桜子ちゃん、ぜんぜん
芸術家らしく見えないから、この冬吾との関係が不自然に見えちゃうのよね)
 

 そして、その本音がこころの動きの一部分であるあいだは、かえって一番
近い人には見せたくないときもあると思う。その一部分だけでは、自分の
気持ちを伝えきれないときもあるから。その想いを持っていること自体、
自分の我が儘に思えたり、相手への裏切りと思えたりすることすらある
から・・。自分の思いは、日常次元のことと一緒に語ることは出来ないところ
もあるのだと思う。


 笛子にしても、夫婦になり、子供もできるというのに、冬吾のその部分は
どうしても、触れることの出来ない、自分のものになることのない一部分
なのだろう。冬吾さんが自分の思うような絵を描いていないとすれば、それも
悲しく、どうぞあなたの思う通りに生きて下さい、といいたいのだけれど、
そうして、その世界に没頭してしまう冬吾は、自分の夫でありながら、自分の
夫という枠にはめ込んで安心していられる存在ではないことを感じている。


 ひとりでまっすぐに立って生きていた笛子は決心して冬吾と結婚したが、
職はなくなり、守るべき子供は出来、心から潔く、冬吾の背中を押してやる
ことのできない自分にもはがゆさを感じているに違いない。珍しく強い調子で
言ったこともそのいらだちゆえかもしれない。


 これから、このふたりがどう話し合い、理解しあい、どうゆう生活を
選びおくっていくのかとても興味がある。たぶん・・笛ねえのほうは何らか
の進歩を見せてくれると期待しているのだけど、冬吾さんったら、すっごく
心配。気になってるけど信用できない男・・ですからね私の中では。


 杏子さんもまた、ひそかな決心を磯さんに相談する。「大丈夫よ。もも
ちゃんはしっかりしてる。それに、自分で気づいてないかもしれないけど、
とっても綺麗よ」と磯さん。「ほんとにきれいだ〜」といきなりヤスさん。
 はじめて、美しさに触れましたね。ずっとそう思って見ていた杏子さん
ファンも多かったと思うんですが・・。これからこの言葉がキーワードに
なるのか杏子さんの人生がどのように開けていくのか、こちらもまた注目
していきたいところです。