撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

みなしご(純情きらり)

 杏子が、警察に連れていかれた。集会を開いて、政府へ反抗する
ようなことを言っていた、ということになっているらしい。よく
まあそんなことをいえるものだ。おまけに、あんなにあやしげな男
の言うことを信用するなんて、つかまえたがってる、見せしめのために
痛めつけようとしてるとしか考えられない。


 それでも、そんな理不尽なことがまかり通るのが、戦争という、
非常時なのだ。そうして、いつも弱いものから痛めつけられる。
 あんなに美しい杏子さんでさえ、なんのいたわりを受けることも
なくためらうこともなく、痛めつけられる。却って女と言う弱い
立場まで背負って。


 山長のおかみさん、かねさんを責めることも、今回ばかりはできない
と思う。自分の身の安全を考えるだけで手いっぱいだったひともいる
はずだ。桜子がひとりで警察に行って大丈夫かとこちらの方が心配した
くらいだ。せめてじいちゃんでも付き添ってやれよ、どんな目にあわさ
れるかわからないんだぞ!と思った。守ってやる人はいないのか?


 達彦が大人に見えた。母の物言いをわびる達彦。愚痴も言い訳も
言わない達彦。キヨシを引き取りに来た達彦。ああ〜もう今日は
福士誠治くんにメロメロです。かっこいい〜!でもでも、ちょっぴり
声が違っていたようですよ。風邪でもひいたの?それとも泣いてたの?


 冬吾が家を出た。津軽弁の文語調は、さすがに聞き取れませんでした。
読み取れるとも限らないけど、達筆の書き置きをもう少し画面に出して
欲しかったなあ・・と思います。冬吾さん、一生懸命美文書いてたみたい
だし・・。


 それにしても、有森家の兄弟たちが、行く末を心配している様子は、
寒空に、ひなが身を寄せあって震えているような心細さを感じさせます。
磯さんも、おじいちゃんも、大きな翼は持っていない。あらためて、
父も母も居ない、みなしごたちなのだと感じさせられてしまった。
 女子供が、自分で自分の身を守るには、まだまだきびしい時代です。