撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

揺れる心地よさ

なんとなく
固くなっていたのは身体だけではなかった
と気づいた
もっといえば
身体と心は思った以上に結びついている
と気づいた


久しぶりのプール、初めて一緒に行ったひとに平泳ぎの手ほどきを受ける
教えてもらった中でいちばん目からウロコだったのは手の掻き方の方向
「手は浮力、脚は推進力、もっとちいさく、もっと力抜いて」
昔から平泳ぎはちっとも出来なかった
波もたてずに涼しい顔をしてプールを何往復もするひとには憧れを抱いていた
すうっと進んでひゅって息継ぎをする美しさ!


教えてもらったからと言ってすぐに思い通り泳げるわけでもないのだけれど
教えてもらったとおりに、歩きながら手を動かしていると
自分のまえには水が綺麗に模様を描いているのが見えて
腕をのばしていくときにはそれにナイフをいれたかのように
水の中に線の道ができていくのが見えるのがとても楽しかった
すこしだけふうっと浮き上がる感触も味わえたし・・・


水と戯れるように身をまかせていると気持ちがゆったりと澄んでくる
からだとこころがゆっくりと一緒にほどけてくる
幸せも望みすぎると窮屈になる
幸せだからといっていつも笑顔でばかりいられるわけでもないし
幸せならすべてのことが自分の思い通りになるわけでもない
毎日いろいろなことがある
ひとにはひとりのなかにもいろいろな顔がある
それでもそのすべてが自分が選んだもので
そのすべてを抱えて生きていこうと決めたものだということ
きついことがあろうとも自分の足で歩いて行けることそれ自体が幸せなのだと・・・


どこまでも自分であることに間違いはないけれど
決して自分の力だけでことが動いているわけではないこと
水の模様を眺めながらやみくもに動くのではなく
一番いいときに必要なぶんだけ動くことの大切さを知った
自然をはじめとするまわりの様々なものに囲まれていること
その力を受けながら生きていること
その理に逆らわずにおだやかに呼吸を合わせていけば
いちばん楽に進むべき方向へと進んでいけること


生きていく上で、自分のなかに揺るぎないものを作るのは大切なことだ
しかしながら
揺るぎないものは揺れないものではなくて
時には揺れながら自分の背骨をまっすぐにリセットするのもいいのかも・・と
プールの時間の最後には昔から大好きだった背泳ぎで
水の音と自分の呼吸の音だけを聞きながら明日からの自分が少しだけ変わる予感を感じていた