撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

繋げていくもの

 いきなり夏のきびしい暑さのもと、中学生のラグビーの試合。
3年生にとって最後の試合。順位や勝ち進むことからは解放されて
しまった、ただそれだけの・・最後の試合。


 開始早々からトライの連続。きつい予選プールで、ぎりぎりの力で
重いプレッシャーと戦ってきたこれまでと違い、伸び伸びと走る子供
たち。上の大会に勝ち進むことはできなかった彼らにとって、この試合
は、どんな想いで戦っているのか?


 一方的な展開にも見える試合。こういうときは、ともすれば緊張も
緩みがちだったいままでの彼らとは違い、最後の最後まで走り抜いて
いた。相手に反撃を許さずに最後まで守り抜いていた。


 仲間から仲間へとパスが通る。今まで手渡さなかったような子から
子へとパスが流れるように、切り裂くようにボールが渡ってゆく。


 3年生全員がグラウンドを駆け回る。今まで、ジャージは着たものの
グラウンドに出られなかった子もここにきてすべての3年生がこのとき
ばかりと駆け回る。


 様々なパターンでトライを重ねる。視線を合わせてパスをする子供
たち。ボールを託されてトライする子供たち。仲間の必死のプレイを
トライへとつなごうとする子供たち


 はっきりとした結果を残すことはできなかったけれど、彼らの中には
こんなにも確かな積み重ねがある・・・。仲間と走り続けた日々は
彼らの中に確かなものを残している・・・。それがどれだけ大切なもの
だったことか、手を伸ばせばもうひとつつかめることがあったことか
この時間がどれだけ輝いていることか、なにかを感じていたのだろうか
それとも・・ただ走り続けていたのだろうか。


 それでもいいのだろう。後輩にあたる子供たちだって3年生がどんな
想いを抱えて走っているかなんて何も分かっちゃいない。でも・・・
この暑い日差しを受けてこの場所にいることだけは確かに共有している
のだから・・。そんな日々の積み重ねがいつか綺麗に繋がってなにかを
ふっと生む日もくるかもしれない。


 走り続けてくれた子供に感謝。最後まで走るスピードを緩めなかった
こと・・それだけで、なにかはまたひとつ産まれていると感じる。