溢れ出す(ちりとてちん)
ひとの心の中には想いをためる壺でもあるのだろうか。
ときどき無性に泣きたくなる。時には意味もなく怒りたく
なる。
「わたしがやっと見つけたわたしの居場所に
入ってこんどいて!」
B子と呼ばれ続けてきた喜代美が自分の心の中をぶちまける。
どうしようもなくなって・・初めてぶちまける。
「大丈夫です!」と叫んで出ていったA子。
自分のことしか見えてないのは百も承知。それでも自分を
自分で守ってやらなければならないときもある。そんな
嫌な自分をさらけ出すことも、濁ってどうしようもなくなった
心の中の壺をひっくり返すことも、必要な時もあるのだと思う。
子供がコップをひっくり返したときに、何も言わずに片づけて
やる時代もあれば、大丈夫かと聞いて寄り添ってやる時も・・
そして見て見ぬ振りをして自分で片づけさせる時代もある。
悪いことをしたと自分で分かっているひとにきつい言葉を
浴びせては逃げることしかできなくなる・・・。必死に笑顔を
作り店のひとに謝って出ていく喜代美・・。
「相手見て、言葉選んで、もの言え」
草若師匠が草々に掛けた言葉に胸が熱くなる。そして喜代美に
暖かいお茶を出し、喜代美の心がおちつくのを見てから
「あの友達には心がようぬくもった時に謝っておき・・」
空っぽになったこころに暖かいものが流れ込む・・・。
奈津子さんの、落語家の修行って特別なものかと思ったら
みんな同じなのね・・という言葉に頷かせられる。そう・・
大人になって社会に出ていくために必要なこと・・。
「ぎょうさん笑ろうて生きるにはときにはぽーんと思い
切り良く飛ばなあかんのかもしれまへんなあ」
小梅さんの言葉は、ここちよく、そして深い