撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

飲み込む言葉・投げつける言葉(どんど晴れ)

 何とも切ない今日のやりとりでした。


 つばさの母が夏美に投げつける言葉。母に手を引かれながら
口を開くこともその手を離すことも出来ず、ただ夏美を振り返る
つばさ。なにか言いたいことはあっただろうに、今の状況が子供
には辛すぎて、なにも言えないままその場を母と去るつばさ。
飲み込んだ言葉は彼の胸の中でどんなことを彼に思わせるのだろう。
子供って切ない・・って思った。


 仲居頭ときえが夏美に話す。自分がいなくなっても、もし柾樹が
跡を継ぐようなことになっても、伸一の気持ちを考えてやってくれ
と。自分の想いを夏美に打ち明ける。ときえの伸一を思う心、そして
加賀美屋を思う気持ちが痛いほど伝わる。


 女将環が、夏美に言葉を投げつける。感情から出たような計算から
出たような、苦しい表情をしながら、いつになくきつい言葉をかける。
自分でも、女将としてか母親としてか、はかりかねるようなぎりぎりの
苦しいこころが絞り出されたような言葉・・・。


 自分には責任を取ることすら出来ない・・と落ち込む夏美に加賀美屋
のみんなが追い打ちをかけるようにそれぞれ言葉をぶつける。夏美を
心配しているいくらかの人の声など聞こえないほど激しく・・。


 心をどこかで押しつぶしていると、出てくる言葉も形を変え、違う
おかしなエネルギーを持ってしまいそうだ。だれももとから悪い人でも
ないし、もともと憎んでいるわけでもないのに・・。小さな不満や
わだかまりや、悲しさや淋しさが、なにかあったときに一度に噴き出すと
どうしてこんなに切なくなったり、悲しくなったり、大変な憎しみの
言葉になったりしてしまうのだろう。


 さらさらと流れる綺麗な泉のように言葉を交わしたい・・と思う。