撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

こころ(カーネーション)

糸子の宙をなぞる指先
そこには数日前にいた勝さんの大きな背中の影
なくなる直前に気づいた愛しさ
なくなってしるその存在の大きさ



割烹着すがたの婦人会の数人の場面はショッキング
人の心の中にはいつの時代でも本音と建前があるはずだけれど
昨今のように本音ばかりで美しい建前のないのも問題だけれど
本音も漏らせない時代の建前などそれは化け物に過ぎないのだと思わせられた


戦争は、自分の国をおおきくするための欲の皮を突っ張らせた戦いだったはずなのに
生きて帰ることも許されず命をささげてなんぼだなんて
もうどこかでおかしくなってしまっていることに気づかない異常さ


大きいあたたかい背中
わろたりしゃべったりする顔
こころ
それが全部骨になってこその値打ちやっちゅうんか
これだけのもん
石炭みたいにぼおぼお燃やして
日本はいったいなにが欲しいちゅうねん


いつも世の中はどこかでくるりと入れ替わる
正しいか正しくないかではなく
どれだけのひとがそうなってしまったかによって
昨日までは愛しいひとを守るためにたたかっていたはずのひとが
ただ前のひとがそうなったとおりにするために逝き急がなくてはならなくなる
だからこそ遅れてはいけないのだ
嫌なことは嫌ということ
出来ないことはできないと主張し続けること


心の中は様々な想いがグルグルと・・・
もう糸子は勝には逢えないんだろうか
会わずに生きていくのだろうか


置きみやげは愛しさと憎らしさ
いまとなっては
ただ純粋な愛しさだけよりも
かえって残していかなければならない糸子に贈る置きみやげとしては
優しかったのかもしれないとすら思えるこの時代の皮肉


も・し・も
本当に大切な秘密のツーショットの写真を手元に残したいなら
木の葉を森に隠すようにたっぷりと仕込んでおかなくちゃね・・
ショックを受けた残されたものが
そのうち呆れて大笑いして
笑顔と涙で逝ってしまったものを思い出してくれるくらいに・・・