撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

草々にいさんと若狭(ちりとてちん)

 「しかし大変やなあ・・若狭ちゃん、年季明けたばっかりやし
新婚さんやし、おまけに夫婦とも落語家やし・・」と、心配して
いたのは誰だったっけ。あの時は、生活が立ち行くかどうかが
一番の心配事だったんだろうけれど・・・。


 喜代美は本当に何もかもが初めての生まれたての子供のような
生粋のアホと呼ばれるのに相応しい若妻なんだなあ・・って思う。
何も知らずにテレビの世界に使われて、何も分からずただ仕事に
追われて、初めてもらったお給料に驚いたり喜んだり、親の言葉
にストレートに怒ったり、無邪気にロケ弁勧めたり・・・。


 「新婚旅行いきましょ!」ホントのココロはそうなんだろうな
っておもう。草々との新しい生活もいっぱいいっぱいで何も
考えることもできないけれど、不安になったり、お金稼いだり
するのも、この生活が上手くいくように頑張ってるだけに違い
ないんだ。「やりくりは嫁の仕事」っていわれたことだしね。


 それでも、一緒にいられないのは一番切ない。どんなにお互いに
思っていても、何もふたりで創り上げていないふたりはどんどん
すれ違っていく。一緒に同じものを食べる・・ってすごく意味の
あることに思える。それが、たとえ失敗した料理であっても、いや
もらったたこ焼きであっても、ふたりで顔を覗き込みながら
一緒に食べられたら、何かそこに通じるものが出来てくるはずだ。


 ふたりがお互いのことを「草々にいさん」「若狭」といっている
のが、ふたりの関係を顕わしているような気がする。まだまだ
徒然亭のふたり・・なんだなあ。正平に声を掛ける草々は、ただの
お兄さんで、とても素敵だったけれど、このふたりが、ふたりだけの
呼び方で呼び合う日は来るんだろうか・・・。