撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

恋にあっぷあっぷ

 ごく普通の家庭の主婦アキラ。そのアキラが、人と出会い
仕事に出会い、少しずつ変わっていく。変わっていったのだろうか?
それとも生のままの自分を出していったのだろうか・・。


 現実とおとぎ話が交錯するような、リアルさと、夢見るような
薫りとがある。そんな描写はひとつも出てこないのに、こころや
あたまだけでなく、カラダにまとわりつくようなしみ込むような
そんな大人の女にしかわからないような感覚も感じる。吉田美和
歌を聴きながら、美和ちゃんはいったいどれだけの恋をしたことが
あるのだろう!というほどその胸に迫るストーリーに驚かせられる
ことがあるけれど、田辺聖子さんの小説を読み返していると、この
聖子さん、いったいどれほどの殿方と交渉を持ったことがあるの
だろう!と驚嘆してしまいそうになる。


 そして思い出すのが茨木のり子さんの詩


一人のひと


ひとりの男(ひと)を通して
たくさんの異性に逢いました
男のやさしさも こわさも
弱々しさも 強さも
だめさ加減や ずるさも
育ててくれた厳しい先生も
かわいい幼児も
美しさも
信じられないポカでさえ
見せるともなく全部見せて下さいました
二十五年間
見るともなく全部見てきました
なんて豊かだったことでしょう
たくさんの男(ひと)を知りながら
ついに一人の異性にさえ逢えない女(ひと)も多いのに


 どれだけ多くのものを持つかではなく、どれだけ誠実に関わるか
真剣に向き合うか、によって得るものはちがうのではないかと思う。
 なかなか分かり合えない男と女というもの、諦めるのではなく、
どちらかの言いなりになるのでもなく、まして自分の土俵に引きずり
上げたり、または土俵に上がらせなかったりするのでもなく、違う
ことさえ楽しみながら、またどこかで哀しみながら、ただ愛し続ける
しかないのかもしれない。


 本の話に戻って・・久しぶりに、読みながらあと少しでページが
終わってしまうのが淋しい・・と思えるほどにはまってしまって
読んでしまいました。アキラ・・という女もある意味相当変わってる
し、ある意味危ない女なのだけれど、そんなアキラに嫌な感じがしない
どころか、一緒にドキドキしていたわたしもやっぱり変わってるのか
しらん?と思ったりして・・。


 田辺聖子さんの本のファンは多いと思うけれど、みんなこんなに
感じるのかなあ・・?大切にしたいからこそ、だれにでもは勧めたく
ない。ましてや、オトコになんか絶対読ませたくない!(笑)



歳月

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