撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

己の気持ちを保つ(どんど晴れ)

 心が落ち着いているときは物事がまっすぐに入ってくる。自分の
邪心や、気がかりがなければ、物事を見誤ることはない。しかし
ながら、人は揺れ動き、揺さぶられる。それは、いいことをする
ときも、悪いことをするときも一緒。その時は懸命に誰かのために
尽くしているつもりでも、落ち着いて考えると偏った考え方になって
いたり気づかずに他のひとを傷つけていたり・・ということも起こら
ないとも限らない。また、自分がこだわる考えや、目指す先があり
すぎると、ものごとの自然な流れや、守るべき道理から逸れていっても
気づかなかったりすることも起こりうる。


 夏美が怪我をしたのでさえ、あまりに一生懸命になりすぎて、ある意味
ひとつひとつを大事にすることを忘れ、脚立の位置を変えることを
怠ったからことは起こったのだもの。夏美の足でなく、うつわの箱が
落ちて皿が割れてももおかしくないくらいの無理をしていたのだから・・。


 自分の心を平常心に保ち続けるというのは、言うよりももっと難しい。
しかし、それは何が大切か・・という、自分の心をきちんと持つこと
でもあるのだろう。環さんには足りないもの・・?


 こうじが、おやっさんも悪い人じゃないから・・と夏美にいう。こいつ
根っこのところはホントにいいやつだなって思う。それに夏美が答える。
私も、板長さんも、加賀美屋のことほんとに好きなんだからいつかは
分かり合える日が来ると信じている・・と。


加賀美屋が好きなこと。
加賀美屋の幸せを、自分の幸せにできること。
無理に変えようとせず、またこだわらず、ありのままの加賀美屋を愛すること


 なんとなく、そんなことが思い浮かぶ。これって、大きな木を、単なる
植物ではなく、人間と同じ生き物だと思うように、加賀美屋というものを
自分以上に長生きをした大切な人のように敬い、そして我が子のように
慈しむ・・・そんな気がするなあ・・・。