撫子の花びらたち

すべての出会いは幸せのためであってほしい

まっすぐな瞳(純情きらり)

 桜子、冬吾、亨ちゃん、みんな無事で良かったね。


 桜子に、冬吾がもうひとつだけ頼みがある、という。桜子を描く冬吾。
冬吾の前に座った桜子の、瞳は、まっすぐに冬吾に向けられていた。なんの
迷いも、ためらいもなく。そこには、自分の人生を自分で決めたひとの
しずかな、凛としたたたずまいが感じられた。


 達彦も、かねも、もぎとられるように別れを余儀なくされた。大切な
大好きなひとと、別れてばかりだ。冬吾もまた・・。でもそれは、引きちぎ
られたのではない。彼女が初めて、自分の意志で別れを決心したのだ。
 それは、別れですべてをなくすのではない・・と気づいたから。出会いと
別れは、生きているかぎり限りなくやってくる。しかし、別れは喪失ではない。
 ひとと、いっとき共有する時間と世界は、数限りない想いを重ねてくれる。
それは、すべて自分のものだ。目の前にいたひとはいなくなったとしても、
そのすべてはわたしのなかに美しいはなびらのように降りしきる。思い出せば
虹のように、花のように、心に灯がともるように・・・。


 「ハチミツとクローバー」の竹本くんが、自分に問いかける、「ずっと
考えていたんだ 実らなかった恋に意味はあるのかなって・・・・」という
その答えと通じるものを感じた。生きていること、そのものが、とてつもない
プレゼントであると、私は信じている。


 おとうさんと、おかあさんを見つめる加寿子がたまらなく幸せそうな笑顔
だったのが、とても幸せな気分にしてくれました。