2006-08-31から1日間の記事一覧
冬吾は選ばれた芸術家なんだろう。桜子より格段に、桜子より純粋に。 桜子は、冬吾のことを「命を見る力がある」と言った。美しさや、力強さや 命の輝き・・・そのものが秘めている、一瞬の真実を、浮かび上がらせて、 切り取って、映し出すのだろう。刹那の…
杏子の祝言の日、八州治に召集令状の知らせが来た。だれも 何も言えない。ひとり気を使ってしゃべり続ける八州治さんが 痛々しかった。しゃべりすぎだ、と言う冬吾に八州治は言う。 おまえは、生き残っておれの分まで絵を描け、赤紙がきたのが おまえでなく…
桜子の為に生きていたという冬吾。私にはどうしても達彦抜きには 考えられない。死の淵をさまよったときに冬吾が見た夢はまるで 達彦が見るような夢だ、と以前書いた。そして、桜子がピアノに 向かう絵。その絵を見て桜子が作った曲、Tに捧ぐ。冬吾に・・ と…